a.公害汚染防止
工場等から排出されるPM2.5等の大気汚染の防止や排水処理等、公害汚染を防止する機械、プラント、製品等を製造販売、設置、維持・メンテナンスする産業。海外では「end of pipe」産業とも言う。狭い国土の日本はかつて工業化に伴い深刻な公害が発生し、苦難とその克服の上に生まれた環境技術で、世界をリードする分野である。工場とも深く関わるので、日本経済(GNP等)や製造業の動きと連動しやすい。
b.環境コンサルティング(建設コンサル系)
日本の建設コンサルティング業界の分野に属し、公共事業に伴う環境調査、計画、アセスメントを行う。開発における環境への悪影響の最少化や持続可能な開発方法等も提案。環境省等のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)作成等の自然環境調査も行う。
国家資格である技術士、技術士補や生物技能分類検定の資格は大きな力を持つ。
c.環境分析
大気では、工場等から排出されるばい煙や環境大気中の有害物質、悪臭物質等の測定、水質・土壌では、工場・生活排水などによる汚濁物質排出状況、河川・湖沼・海域の汚濁状況や工場跡地等の土壌汚染状況を測定する。
また工場、建設工事、道路、鉄道、航空機から一般環境までの騒音・振動も測定。国家資格の環境計量士はこの分野では大きな力を持つ。東北大震災後は食品や農林水産物の放射性物質の分析業務も増加。
d.再生可能&省エネルギー
東北大震災後の2012年以降、固定価格買取制度等による「再生エネルギー利用」の急成長に伴いに日本の「再生可能エネルギー」分野が飛躍、2015年歴史上はじめて196カ国が温室効果ガス削減目標・行動をルール化し合意し(パリ協定)、世界では脱炭素に向けたパラダイムシフトが始まった。その流れは年々国内外で強まり、現在日本でも脱炭素に向けた産業構造や社会生活の劇的な変化の入口に入っている。ただ日本は未利用の原子力発電があるためか、他の先進国に比べて再生可能エネルギーが伸びず、政策目標も非現実的なものとなっている。
e.リサイクル&廃棄物処理
日本は工業立国からサービス業等の第3次産業の割合が増え、廃棄物も減少し、業界全体として日本のGNPの動きとも連動しやすい。ただリサイクル意識や技術の向上から、分野によっては、気鋭な成長企業も少なくない。また再生可能エネルギー事業等へと事業を多角化する企業や、AI IoTを使った無人分別プラントを開発する協会も立ち上がっている。近年では業務提携やM&Aにより、企業規模の拡大や効率化を図る動きもみられ、株式上場企業も増加している。
リユース市場においてはこれまでの実店舗型に加えてフリマアプリの台頭により爆発的な広がりを見せているが、アプリ上でのCtoC型のため市場としての成長は限定的。カーシェアリン等のシェアリングエコノミーは大きな広がりを見せ、社会に定着していく様子だ。
f.上下水、環境浄化&再生
上水道は、ほぼ全国蛇口から直接飲めライフラインとして世界最高水準の安全性と安定性を備えている。下水道は毎日の生活汚水や雨水を速やかに排除し、生活環境の改善と公共用水域の水質を保全する。近年上下水道業界は、M&Aや民営化を推進する法律等整備により、外資系企業が参入しやすい状況へ変換。
g.オーガニック
消費者の安全志向の高まりから国内の有機農産物・加工食品の需要は高まり、それに伴う農家、加工食品業者、流通・卸売業者、自然食品店・生協・スーパー等の小売等も伸びている。
世界ではオーガニック食品市場規模はこの10年で2倍に拡大とのデータ(農林水産省)あり、先進国を中心に、既に一般の日常生活に浸透してきている様子だ。
h.環境調和型材料・製品の製造・販売
「低燃費・排出認定車」・「ハイブリッド自動車」等の成長をはじめ、エコカーのみならず、全ての分野の分野で、省エネ、環境配慮、健康、有害物質の不使用に配慮した製品が拡大。リチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞受賞した吉野彰氏もエコプロダクツを開発する意識だったと授賞式でスピーチ。
i.グリーンハウス&ビルディング
今年度環境省が最初に掲げている重要施策がネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等による住宅における低炭素化促進事業であり、一歩進んでいるネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)においては、既に多くの地域で成功している。ビル施設の電気や空調システムの進化や長寿命化の技術進歩も著しい。
j.その他
自然環境や生活環境対象の理系(生物や化学等)の環境コンサル以外に、シンクタンク、或は環境管理・IT・貿易・国際開発・経営コンサル系の環境コンサルティング会社がある。
ESG
※1投資とは、投資先の会社におけるEnvironmental(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの要素を考慮した投資のことで、2016年、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、ESGに積極的に取り組んでいる会社への投資に乗り出す準備の開始を発表し、将来的には数兆円の規模に膨らむ予測もある。世界全体におけるESG投資残高は約2580兆円。
※1 SDGs(エスディージーズ)を知ろう!
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年国連総会で採択された、2030年に向けて持続可能な開発へ世界を変革する行動計画と具体的行動指針。17の目標と169の達成基準からなる。その中で環境の分野の目標は下記6つ。