真の文明は、山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし。 田中正造

田中正造

1.環境の仕事 4大分類

【1】環境ビジネス(民間企業)の仕事・・・10中分類 

a. 公害防止

工場等からの大気汚染(PM2.5等)、排水処理、騒音・振動、悪臭等、主に旧公害対策基本法による七公害の汚染を防止する機械・プラントメーカー等

b. 環境アセスメント

自然環境及び生活環境の環境調査、設計、計画、環境アセスメント等。生物調査もこの分野。主に建設コンサルティング業界の環境部署での業務等

c. 環境測定分析

大気、水質、土壌、食品、アスベスト、シックハウス、放射性物質、騒音、振動等の測定分析業務。

d. 再生可能&省エネルギー(脱炭素)

太陽光/熱、風力、バイオマス、地熱、中小水力発電等の固定価格買取制度での再エネ発電事業。ESCO等の省エネコンサル&対策等。

e. リサイクル&廃棄物処理

容器包装、自動車、家電、食品、建設、パソコン等の一般及び産業廃棄物のリサイクル。産業廃棄物の収集、運搬、中間処理、適性処理及び最終処分。
実店舗やフリマアプリ等でのリユースやカーシェアリング等のシェリングエコノミー。

f. 上下水道、環境浄化&再生

上水道と下水道の設計・コンサル、資機材、処理技術の装置の設計・製造・施工、処理、建設等。
環境浄化では、土壌汚染調査・浄化、アスベストや放射性物質の除染。環境再生では緑化、河川、湖沼等の再生等。

g. オーガニック

有機農産物、加工食品、畜産、有機飼料、飲料・酒類からコットン、化粧品等の生産、流通、商社、小売り、外食まで。持続可能な水産や森林認証も含む。

h. エコマテリアル&プロダクツ

素材:鉛フリーはんだ、生分解性プラスチック、LED、光触媒、炭素繊維、脱硝触媒、植物インク、RO膜等製品:低燃費低公害自動車、省エネ家電、日常品等

i. グリーンハウス&ビルディング

省エネ住宅及びビル、省エネ設備&機械、長寿命化、スマートハウス、HEMS、BEMS、ZEB、ZEH、屋上・壁面・敷地緑化、コジェネレーション、地中熱等

j. その他

環境コンサルティング(シンクタンク、環境管理、IT、貿易、国際開発、経営コンサル系等)、環境金融(ESG投資等)、環境メディア、環境分野人材等

【2】公務員系の仕事

国、地方公務員、独立行政法人等、公益法人、国際公務員等での環境の仕事。

【3】NGO・NPO系の仕事

地域、国内、国際的な環境NGO、環境NPO、一般社団法人等での仕事。

【4】その他の仕事

大学等研究機関やジャーナリスト、弁護士、翻訳等の専門職での環境系の仕事。
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2.環境ビジネス各分野の特徴

a.公害汚染防止 

工場等から排出されるPM2.5等の大気汚染の防止や排水処理等、公害汚染を防止する機械、プラント、製品等を製造販売、設置、維持・メンテナンスする産業。海外では「end of pipe」産業とも言う。狭い国土の日本はかつて工業化に伴い深刻な公害が発生し、苦難とその克服の上に生まれた環境技術で、世界をリードする分野である。工場とも深く関わるので、日本経済(GNP等)や製造業の動きと連動しやすい。

b.環境コンサルティング(建設コンサル系)

日本の建設コンサルティング業界の分野に属し、公共事業に伴う環境調査、計画、アセスメントを行う。開発における環境への悪影響の最少化や持続可能な開発方法等も提案。環境省等のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)作成等の自然環境調査も行う。
国家資格である技術士、技術士補や生物技能分類検定の資格は大きな力を持つ。

c.環境分析

大気では、工場等から排出されるばい煙や環境大気中の有害物質、悪臭物質等の測定、水質・土壌では、工場・生活排水などによる汚濁物質排出状況、河川・湖沼・海域の汚濁状況や工場跡地等の土壌汚染状況を測定する。
また工場、建設工事、道路、鉄道、航空機から一般環境までの騒音・振動も測定。国家資格の環境計量士はこの分野では大きな力を持つ。東北大震災後は食品や農林水産物の放射性物質の分析業務も増加。

d.再生可能&省エネルギー

東北大震災後の2012年以降、固定価格買取制度等による「再生エネルギー利用」の急成長に伴いに日本の「再生可能エネルギー」分野が飛躍、2015年歴史上はじめて196カ国が温室効果ガス削減目標・行動をルール化し合意し(パリ協定)、世界では脱炭素に向けたパラダイムシフトが始まった。その流れは年々国内外で強まり、現在日本でも脱炭素に向けた産業構造や社会生活の劇的な変化の入口に入っている。ただ日本は未利用の原子力発電があるためか、他の先進国に比べて再生可能エネルギーが伸びず、政策目標も非現実的なものとなっている。


e.リサイクル&廃棄物処理

日本は工業立国からサービス業等の第3次産業の割合が増え、廃棄物も減少し、業界全体として日本のGNPの動きとも連動しやすい。ただリサイクル意識や技術の向上から、分野によっては、気鋭な成長企業も少なくない。また再生可能エネルギー事業等へと事業を多角化する企業や、AI IoTを使った無人分別プラントを開発する協会も立ち上がっている。近年では業務提携やM&Aにより、企業規模の拡大や効率化を図る動きもみられ、株式上場企業も増加している。
リユース市場においてはこれまでの実店舗型に加えてフリマアプリの台頭により爆発的な広がりを見せているが、アプリ上でのCtoC型のため市場としての成長は限定的。カーシェアリン等のシェアリングエコノミーは大きな広がりを見せ、社会に定着していく様子だ。

f.上下水、環境浄化&再生

上水道は、ほぼ全国蛇口から直接飲めライフラインとして世界最高水準の安全性と安定性を備えている。下水道は毎日の生活汚水や雨水を速やかに排除し、生活環境の改善と公共用水域の水質を保全する。近年上下水道業界は、M&Aや民営化を推進する法律等整備により、外資系企業が参入しやすい状況へ変換。

g.オーガニック

消費者の安全志向の高まりから国内の有機農産物・加工食品の需要は高まり、それに伴う農家、加工食品業者、流通・卸売業者、自然食品店・生協・スーパー等の小売等も伸びている。
世界ではオーガニック食品市場規模はこの10年で2倍に拡大とのデータ(農林水産省)あり、先進国を中心に、既に一般の日常生活に浸透してきている様子だ。

h.環境調和型材料・製品の製造・販売

「低燃費・排出認定車」・「ハイブリッド自動車」等の成長をはじめ、エコカーのみならず、全ての分野の分野で、省エネ、環境配慮、健康、有害物質の不使用に配慮した製品が拡大。リチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞受賞した吉野彰氏もエコプロダクツを開発する意識だったと授賞式でスピーチ。

i.グリーンハウス&ビルディング

今年度環境省が最初に掲げている重要施策がネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等による住宅における低炭素化促進事業であり、一歩進んでいるネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)においては、既に多くの地域で成功している。ビル施設の電気や空調システムの進化や長寿命化の技術進歩も著しい。

j.その他

自然環境や生活環境対象の理系(生物や化学等)の環境コンサル以外に、シンクタンク、或は環境管理・IT・貿易・国際開発・経営コンサル系の環境コンサルティング会社がある。
ESG※1投資とは、投資先の会社におけるEnvironmental(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの要素を考慮した投資のことで、2016年、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、ESGに積極的に取り組んでいる会社への投資に乗り出す準備の開始を発表し、将来的には数兆円の規模に膨らむ予測もある。世界全体におけるESG投資残高は約2580兆円。

※1 SDGs(エスディージーズ)を知ろう!
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年国連総会で採択された、2030年に向けて持続可能な開発へ世界を変革する行動計画と具体的行動指針。17の目標と169の達成基準からなる。その中で環境の分野の目標は下記6つ。



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3.環境就職のポイント

【1】業種、職種、会社を絞り込むポイント 

・いつから環境に興味を持ったのか、何がきっかけだったのか。
・環境分野の中でどの分野に興味や問題意識があるのか。
・どの立場で環境問題を改善したいのか。(民間 NPO 公務員 アカデミック等)
・これまでの学歴や諸活動は自分の興味ある分野で活かせるか、対応出来るか。
・興味だけでなく、職種においては、自分の適正、得意不得意はあるか。
・安定志向の大企業か。仕事の裁量や意思決定が早くから出来るベンチャーか。
・環境企業の中でも、環境理念先行型と利益先行型、どちらを選ぶか。
・社長や創業者の理念、信条、技術への共鳴出来るか、を重要視するか。
・創業間もない小ベンチャーで創業メンバーからやりたいか。
・国内外での希望の勤務場所、転勤の有無、海外赴任のある会社か。
・英語や外国語を使う仕事か。海外出張の数等。
・会社の中でどの職種(技術職、営業職等)を選ぶか。
※環境会社においては、どの職種や仕事でも、その会社の事業が地域環境、地球環境の改善に貢献してれば、どんな職種でもその会社に貢献することにより、間接的に地域環境、地球環境に貢献することになると考えています。

【2】環境就職Q&A

Q:HPで求人情報が出ていない会社等へのご応募
実際募集してない会社も多いですが、数割程度は募集を検討しているケースが見受けられます。応募の場合は手紙、メール、電話の順がお勧めです!

Q:HPの印象と企業の実態について
ホームページのセンスの良さと会社のセンスの良さは関係している部分もありますが、環境分野の企業においては、環境技術や経営が立派でも、HPに力を入れていない会社も少なくなく、また反対に中身の薄い会社でもHPだけ立派な会社もよく見かけます。

Q:人材会社(ナビ等含)利用の重要注意点
ナビ運営等人材会社は民間企業なので求人企業は採用コストがかかるが、採用コストをかけたくない会社は自社HPや他の方法で採用。この場合競争率は劇的に低く、また応募者のサーチ能力を高く評価してくれる。大手ナビ、専門ナビ(EcoJob等)を両車輪に、探すのは自身が望ましい。

Q:良い環境の会社を見極めるポイントは
HPで見るべきポイントは事業内容と会社の沿革、そして調べられる範囲で離職率(会社四季報等)。良い会社はやはり離職率が低い。採用ばかりしている会社は、事業拡大中か離職率が高いかのどちらかで、残念ながら後者のケースが多い。

Q:新卒文系出身の環境の仕事
地域或いは地球環境の改善に貢献している会社であれば、社員がその会社に貢献することにより、地域や地球の環境改善に間接的に繋がっている。そのような会社では全ての職種が環境の仕事と言える。

Q:採用予定数より採用数が少ない会社の注意点
求人企業の採用活動において、「必要に迫れての求人」と「良い人材がいた場合のみ採用」との会社では、同じ一つの求人でも採用される確立は天地の差があるのでご注意ください。

Q:競争率が高い会社へ応募の注意点
環境業界はBtoB型のビジネススタイルなので、会社名が知られていなくても、優良な会社はたくさんあります。ネットやメディアで名前のみが有名に先行した会社は、特に競争率が高くなります。

Q:環境経営のしっかりしている会社
会社が自ら発信するCSR(環境)報告書を参考にしたり、日本で数種類存在する、外部評価の「環境格付け」があります。どちらにしても、具体的に何をもとに、或いは基準に評価しているのかが大事です。

Q:環境分野企業の平均年収は
業種によって大きな違いはありますが、決して高い水準ではないですが、標準レベルです。税金による政府、或いは寄付によるNPO等と違い、市場の中で採算が取れる事業が環境ビジネスです。

Q:環境就職にこだわらないことも大事
環境理念、ビジネス、採用対象等のバランスの中で、希望の会社を探すのが第一ですが、環境に対する社会貢献や自己実現は、環境就職のみならず、NPO・NGO、個人、地域、社会活動でも可能なので、環境就職にこだわり過ぎないことも大事です。
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